私の“山”の師匠は祖父と父親、そして小さい頃からお世話になっている漢方医のS先生。S先生は80歳になるというのに、いまだに現役として漢方医を続け、山にも入り続けています。
そのS先生が言うには、「とくに春の季節に山菜を食べることは体に良い」のだそうです。その秘密は山菜特有の“苦味”にあるのだとか。
春というと、花粉症をはじめとするアレルギー症状、湿疹やかぶれなどの皮膚疾患、頭痛、肩こり、めまいなどの不定愁訴、自律神経の乱れによる憂うつ感や不眠などの症状に悩まされる人が多いですが、これは春の特徴なのだといいます。気温の変動、1日における寒暖の差が激しい移り変わりの時季に体がついていけないことで、このような症状が出やすいのです。
もうひとつは、春が芽吹きの季節であることも関係するといいます。植物が新芽を出す芽吹きの季節の春は、すべての生命が活発に活動をし始める季節。善悪に関係なく、いろいろな微生物、菌類、虫などの生物がいっせいに活発化し、その急激な変化に対し、少しでも体調が悪くなっていようものなら、その勢いに負け、過敏に反応して“春の不調”として出てしまうというわけです。
また、人の体も冬の間は体温を逃がさないために、できるだけ体を動かさず、体内に栄養をためて冬を乗り切ろうとしています。一般的に、冬は脂肪がつきやすいといわれるのは、そのあたりに理由があるのだそうです。
しかし、春になると新陳代謝が活発になり、体のエネルギー代謝にかかわる肝臓も活発に働き出して、体内に溜め込んだ脂肪や老廃物などを排出して、季節に応じた体へと変化させようとするわけです。
そのとき、山菜の“苦味”が役立ちます。漢方の世界でも「肝」は、とても重要な働きを担うとされています。とくに血の巡りや循環、体内の解毒機能に関わっているとされ、苦味の刺激が「肝」の働きを助けてくれます。冬眠から覚めた野生の熊が最初にフキノトウを食べるといわれているのは、そのためなのだとか。
冬眠から覚めた熊同様、人間も春には“苦味”を摂る必要があります。また同様に、体の新陳代謝が鈍っている現代人にとって、一年を通して「肝」を刺激し、助ける“苦味”は重要な味だといいます。